女優・吉永小百合のCM※が印象に残り、一度行ってみたいと思っていた千畳敷。
(※JR東日本「大人の休日倶楽部 静岡県『伊豆半島ジオパーク篇』」)

一緒に行こうと妻子を誘ったが、速攻で断られた。一緒に行ってもロクなことがないと思われたようだ。

予定どおり一人で入間港まで車で行き、そこから千畳敷まで歩く。調べるとだいたい40分くらいかかるらしい。

いつも歩き始める前は、日頃の運動不足解消になると思って張り切るのだが、すぐに疲れて後悔する。この時もそうだった。

天気の良いGWで、歩き始めたとたんに汗ばむ。起伏のある山道で息も切れる。

途中、かしましく話しながら歩いて来る5人組の女性陣とすれ違った。風貌や声、みんな同時にしゃべっている様子からして、うちの母親と同じくらいの年齢層だろうか。僕なんかより、よっぽど元気があった。

まさか、あんな風に吉永小百合がこの山道を歩いてないよな、と独りつぶやく。いやいや、当然、クルーザーか何かで岸まで乗り付けたんだろう、と思い直す。撮影に臨む大女優を、こんな歩かせるわけがない。

南伊豆観光協会のHPによると「千畳敷では、かつて伊豆石(軟石)の採石が行われており、火山灰の地層を人工的に切り出した跡も残る」とある。

いろいろ観察しているうちに汗も引いたので、そろそろ帰ろうと思った。帰りがけに、素潜りをしていた地元住民らしい若者たちの一人と目が合い、どこから来たのか尋ねられた。

歩き疲れていたこともあり、入間港から歩いて来たと答えたら、(そんなことは、わかってる)という顔をされた。あ~住所か、と気付いて埼玉と答えた。

この返事にも微妙な顔をされた。たぶん、遠方からの観光者を期待していたに違いない。(埼玉からでごめんね)と内心、思いながら千畳敷を後にした。

若林泰弘