義父母宅に宿泊させてもらっている間、近所をよく散歩する。明里も小学生くらいまでは一緒について来た。

 松崎海岸の先に、地元で「弁天様」と呼ばれる小さな島がある。島の周りには遊歩道があり、ぐるりと島を散歩することができる。幼い子供にとっては、ちょっとした冒険になるときがある。

 遊歩道には、日の当たらない岩場の間を通る箇所があり、そこは、夏場になると道をふさぐように大量の「フナムシ」が発生する。はじめて明里と一緒に大量の「フナムシ」に遭遇した時は絶叫ものだった。

 日が当たらない暗がりで、目が慣れていないところに足を踏み入れた途端、パッと見、小さいゴキブリみたいなムシたちが一斉に散って道をあけたのだ。さながら「まっくろくろすけ」だ。「となりのトトロ」に出てくるやつ。

 もし「まっくろくろすけ」を実写にしたら、この大量の「フナムシ」みたいになるはずだ。アニメで見ると可愛いが、小さいゴキブリに見える大量のムシが突然、目の前に現れると身の毛がよだつ。

明里は絶叫して僕に抱きつき、その後は、おんぶすることになった。

楽しかった。

若林泰弘

投稿者 akari