明里が中学校に入学した頃、「部活はどうするのか」という、ありがちな質問をしてみた。
「合唱部かサイエンス部。それとも食物同好会かなあ。」みたいな返事だったと思う。
小学校の合唱クラブの活動をよく見に行ったので、「合唱部がいいかもね。」とか、「サイエンス部なら「リケ女」になれそう。」「食物同好会なら「女子力」が上がるかも。」なんて話もしたような気がする。
「リケ女」も「女子力」も、その頃、流行った言葉なので明里も意識していたのかもしれないが、実際に入部したのは「ダンス部」だった。「ダンス」なんてDNAは、明里の両親には全く組み込まれていないので、ちょっと驚いたが、突然変異なんだろう。

保育園から小学校まで参観可能な明里の学校行事は、我が家の一大イベントとして皆勤してきた。当然、文化祭の発表も見に行く。明里が家で、部活の友達との関係に悩んでいたり、ダンスの振り付けを懸命に覚えたりしている姿を知っているので感情を込めて鑑賞した。・・・
こう見えて僕は、子供の頃からアイドルがそれほど好きではない。見かけによらず「オタ芸」も身に着けてはいない。だから「オタ芸」を駆使してアイドルを応援するオタクたちの気持ちは全くわからない。でも、もし、オタクたちが突如やってきて、娘たちのダンスを応援しながら「オタ芸」を披露したと仮定して妄想する。
・・・これが悪い気はしない。むしろ、とても嬉しいかもしれない。
と言っても、娘との交際は決して認めないが。

昨年に続き、今年もコロナの影響で文化祭を見に行けなくなってしまった。来年、明里は高校3年生となり、今頃は部活動を引退しているかもしれない。限られた高校時代のダンスを最後まで楽しんでほしいと思っている。
若林泰弘