ストレスを感じ始めたら現実逃避を図る僕の本能は明里にも引き継がれたようだ。

明里が中学2年生だった2月中旬の日曜日。近づいてきた期末試験から目をそらしたいのだろう、「どこかへ行きたい」と明里から言われた。

気分が一致した僕たちは、妻の反対を押し切って出かけた。

越生梅林は前日から「梅まつり」が始まっていた。梅まつりは、例年だと2月16日頃から春分の日頃まで行われる。行った時はまだ梅は咲き始めで、来るのが1~2週間くらい早かった気がした。

といっても、僕たちは現実逃避して来たので、梅の花に関する感想は互いに一言も出なかった。たいした会話もなく、屋台のお好み焼きなどを二人で食べた。

天気はよかったけど、風が冷たく寒かった。写真を撮りながら、寒空の下で梅はきれいに花を咲かすんだなと思った。

現実逃避して桃源郷を探しても、そんなものはない、と梅の花を見て再認識したことを思い出す。

いつか明里と、梅の花を見に行ったときの話をしたいと思う。

僕「咲き始めだったけど、きれいだったね。」
あ「気分はブルーだった。」
僕「スカイブルーならよかったのにね。」
あ「レッドブル飲んでも気分はブルー。」
僕「は?」みたいな。
若林泰弘