景勝地としての嵐山渓谷の中心部は、嵐山町名発祥の地碑から細原までの半島部一帯を含む、槻川清流域である。嵐山渓谷は槻川の清流と周辺樹木の新緑や紅葉など四季折々が織り成す風光明媚な処として知られている。

 早春における、この中心部一帯には福寿草の深黄の花が散見でき、春季は老木ながらソメイヨシノの花も随所に見られ心和む。レンギョウやヤマブキの黄花、スミレ、タンポポ、野イチゴ、キンランやギンランも木漏れ日に可憐な花を咲かせる。とりわけ春先から初夏にかけて若草色に芽吹き始めたミズナラやケヤキ、クヌギ、ホウノキなどの木々の間から見下ろす槻川の清流が眺められ、陽の光で明るい散歩道として格好なところだ。この時季、一帯ではヤマユリが数多く見られ優しい香水の香を発している。

管理人注:TBSドラマ「リコカツ」第2話(バーベキューシーン)のロケ地としても使われました。写真は、永山瑛太が北川景子のもとへ走るシーンで渡った橋です。

 盛夏であっても小鳥のサエズリを聴きながら涼風の中に身を置く散策は心地よい。 

 何といっても槻川の清流と共に、この地を引き立てるのは秋空の下、赤や黄色など紅葉したモミジやカエデだ。特に町名発祥の地碑周辺のヤマモミジやイロハモミジ、オオモミジそれにウリハダカエデ、アサノハカエデなどの紅葉は圧巻だ。50~60年前もこの地の紅葉は、大木群の赤松と相まって素晴らしいコントラストを描いていたと当時の写真で知ったが、その相棒の赤松は松くい虫に枯らされ、その雄姿は見られなくなって久しい。

 冬場の時季は、人影も少なく落葉を静かに踏みしめるカサコソという音と、小鳥たちの遠慮しがちな鳴き声と陽の光だけの静寂の場だ。 

~ つづく ~

投稿者 akari